スタッフインタビュー その5  〜銘判打ち〜

波佐見焼の窯元「山下陶苑」。
山下陶苑で銘判打ちを担当している朝長さんにインタビューをしてみました。
筆者も挑戦したことのある銘判打ち。初心者では難しくてうまく打てなかった判子を、スピーディーに的確に打つ朝長さんの熟練の技には驚かされました。 今回のインタビューでは、朝長さんに、銘判打ちの仕事の内容や注意点、難しさや仕事に関わってみての感想についてお話を伺います。


【銘判打ちの仕事内容】

――まず初めに、銘判打ちの仕事内容について教えてください。

朝長 焼き物が卓に接する脚の部分である「高台」と呼ばれる箇所に、専用の絵具を用いて判子を打つ作業です。
商品の種類によって、打つ判子の種類や絵具の種類が違うので、その器に合うものを打っていきます。

【感想】銘判は商品の顔となるため、生産のなかでも非常に重要な仕事ですね。器の種類によって、打たなければいけない判子や判打ち専用絵具(ゴスと呼ばれる青い絵具や、ライラックと呼ばれる茶色の絵具など)の種類が違うため、それぞれ打ち分けが大変な作業だと思います。

※山下陶苑には多様な種類の判子があります。

※左がゴス、右がライラックと呼ばれる判打ち専用絵具です。


【仕事における注意点】

――銘判打ちを行う際、気をつけることや注意することはありますか?

朝長 判子に少しだけ専用絵具をつけて、高台に強く押すことがきれいに打てるポイントとなります。
また、判子が掠れたり、打ち損じたりしないように注意を払わなければいけません。
打つ位置がきちんと揃っていることと、絵具の濃さが均一になるようにしなければいけないため、ひとつひとつ確認しながらの作業となります。

【感想】筆者も銘判打ちを行ったことがあります。見た目には単純な作業に思いましたが、押す力加減が均一でない時は、掠れたり難しい作業だと感じました。
判子がきれいに浮かび上がるように、ひとつひとつ丁寧に打たなければいけない、非常に繊細な仕事です。

※掠れや打ち損じがなく、絵具の濃さが均一になるようにリズム良く判子が打たれていきます。


【銘判打ちの難しさ】

――銘判打ちの仕事をするにあたって、難しいと思うことはありますか?

朝長 判子は商品の形によって打ちにくいものがあるため難しく感じます。例えば、しのぎのコップなど、高台に凹凸のある器や、梅雨など湿度が高い時期は、表面に湿気を帯びているため打ちにくいです。
打っているときに絵具が飛んでしまった際は、削って細かい修正が必要となります。この器は強く押した方がいいのか、絵具の濃さは均一になっているかなど確認しながら作業を行っています。なおかつスピードも求められる難しい仕事です。

【感想】高台部分の判子ひとつを取っても、奥が深いんですね。速く正確に判子を打つことができるのは、長年銘判打ちをされている朝長さんの熟練の技だと思いました。

※山下陶苑オリジナルブランド「nucca」の判子です。新商品開発の際には、商品に応じた新しい判子が作られます。


【仕事に携わってみての感想】

――この仕事に携わってみての感想をお聞かせください。

朝長 銘判は焼き物の顔となる一番重要な部分であるため、責任感をもって仕事をしています。
そのため、ちゃんと打てているか不安になるときもあります。丁寧に打てているか、失敗していないか、真ん中に打てているかなど、気を配るポイントが多い仕事ですね。
でも、焼き上がりをみて、色や位置が揃っていると、気持ちが良いものです。

【感想】素早く判子を打っている朝長さんでも、細心の注意を払ってお仕事をされているんですね。
銘判が器に合っているか、打つ場所は間違っていないか、絵具の濃さは均一か、真ん中に打てているか、掠れていないか、絵具が飛んでいないか…etc。気をつけることが多い、こんなにも難しい作業だとは思いませんでした。
銘判がいかに大切であるかが分かったインタビューでのひとときでした。 皆さんも、器にどのような銘判が押されているかご覧になられたらいかがでしょうか。