スタッフインタビュー その8 〜パット印刷〜
波佐見焼の窯元「山下陶苑」。
今回は、山下陶苑についてもっと知るべく、パット印刷を担当している堀川さんにインタビューをしました。
パット印刷の仕事内容や気を付けること、難しさや仕事に携わってみての感想についてお話を伺います。
※パット印刷に用いられる専用の機械です。
【パット印刷の仕事内容】
――まず初めに、パット印刷の仕事内容について教えてください。
堀川 専用の機械を使って、器にインクをつけ、絵付けを施していく作業です。
1、絵柄の形に凹んだ樹脂板。ここにインクを流し込む。
2、樹脂板とシリコンを接触させる。
3、シリコンに絵柄が付いた様子。
4、絵柄を拾ったシリコンが皿にスタンプされる前の様子。
5、シリコンが皿にスタンプされた様子。
6、シリコンが皿にスタンプされた後の様子。
7、パット印刷前とパット印刷後の器。
――どのようなインクを使っていますか?
堀川 パット印刷専用のインクを使っています。
色としては、黒っぽいゴスや青っぽいゴスなどの種類があります。
※機械の裏側にはインクが溜まっている。
【感想】フリーハンドで描くと時間がかかる絵柄も、パット印刷を行うと一瞬でスタンプできますね。大量生産を行う際には効率の良い方法だと思いました。インクも特殊なものを使ってあり、奥深いですね。
【気を付けること・注意していること】
――パット印刷の仕事を行う際に、気を付けていること・注意していることはありますか?
堀川 インクにゴミなどが混ざっていると、汚れがついたり、スジが入ったりするので、パットを打った後に、器一枚一枚を確認しています。絵柄の白い部分が汚れていたり、きれいに打てなかったりした器は販売することができないので、慎重に作業をしています。
※パット印刷後の器に汚れがないか確認している様子。
――パット印刷は、スピードも求められる作業ですが、速く正確に打つコツはありますか?
堀川 器がインクに接触する前に、シリコンをしっかり止めて、まっすぐ接触するようにすることです。機械が動くとシリコンがわずかに揺れるので、これを一回一回、手で止めなければいけません。この作業を行わないと、絵柄を器の正面に打つことができません。ズレないようにするための一工夫が、速く正確に打つコツです。
※仙茶のパット印刷を行っている様子。シリコンが振動で揺れるため、手で止めている。
【感想】筆者もパット印刷を行ったことがありますが、堀川さんと同じスピードでパットを打つことはできませんでした。(機械が動く速さは変えることができます。)経験を重ねることで、確実に上手になっていく作業だと思います。
※焼成後の器。繊細で複雑な絵柄を、パット印刷の技法を用いて一瞬で描いている。
【難しいと思うこと】
――パット印刷を行う際、難しいと思うことを教えて下さい。
堀川 山下陶苑には、パット印刷を行う絵柄が種類豊富にあります。絵柄が変わるたびに、絵柄の種類を合わせ直さないといけないことが大変です。機械の奥にある樹脂板に、凹んだ形で絵柄が描かれているのですが、絵柄が変わると、その樹脂板ごと変えなければいけません。樹脂板の位置がズレないように固定することが難しいです。
【感想】機械の微調整を行うことが、パット印刷の重要なポイントなんですね。多彩な絵柄をパットで表現するために、絵柄切り替えのタイミングで、ひと手間かけられていることが分かりました。
【仕事に携わってみての感想】
――この仕事に携わってみての感想を教えてください。
堀川 繊細で複雑な染付の絵柄を、一点一点手描きで作ると、大変な手間がかかりますが、パット印刷の技法を使うことで、短時間の絵付けが可能になります。そのため、お客様が手に取りやすい価格での販売ができることに喜びを感じます。
――パット印刷を行う絵柄の中で、特に好きなものはありますか?
堀川 花シリーズの「花つなぎ」「花ちりめん」の絵柄は特にきれいだと思います。パット印刷を行う絵柄は、きれいな絵柄が多いので焼き上がりを見るのが楽しみです。
※花シリーズの器。花つなぎ(青・白)、花ちりめん(青・白)。
【感想】繊細で複雑な絵柄の器も、パット印刷の技法を用いて短時間で絵付けすることで、手に取りやすいものになるんですね。パット印刷が施された器からは、手描きとはまた違った魅力を感じます。この技術に、新時代の器の可能性を感じたインタビューでのひとときでした。