スタッフインタビュー その10 〜一珍調合〜
波佐見焼の窯元「山下陶苑」。
今回は、山下陶苑についてもっと知るべく、一珍調合を担当している道上さんにインタビューをしました。
一珍調合の仕事の内容や、難しいと思うこと、仕事に携わってみての感想についてお話を伺います。
※一珍とは、器の表面に線などを描いたときに盛り上がる絵の具のことです。一珍を使うことで、平らな器の表面に凹凸をつけることができます。
※一珍で花が描かれた皿。絵の具が器の表面から盛り上がっている。
【一珍調合の仕事内容】
――まず初めに、一珍調合の仕事内容について教えてください。
道上 基礎となる粉や作りたい色の顔料の重さを量り、水などを入れ、よく混ぜて作ることです。顔料とは、色を帯びた粉末です。これを使って着色します。
1.基礎となる粉の素。これを砕いて使用する。
2.基礎となる粉の素をふるいにかけている様子。
3.基礎となる粉の重さを量る。
4.作りたい色の顔料の重さを量る。
5.基礎となる粉と顔料を揃える。
6.基礎となる粉と顔料を混ぜる。
7.基礎となる粉と顔料を混ぜたものに水を加える。
8.上記3点が液状になるまでよく混ぜる。
9.液状になった一珍の様子。
10.できあがった一珍を専用の容器に入れる。
【感想】初めて調合の様子を見た時は、一珍という特殊な絵の具を自社で作っていることに驚きました!絵付け師さんのお仕事は、絵を描くだけではなく、道具を準備するところからスタートするんですね。
【難しいと思うこと・気をつけること】
――一珍調合を行う際に、難しいと思うこと・気を付けていることはありますか?
道上 一珍を作るにあたり顔料の種類や重量が違うので、間違えないように気を付けています。山下陶苑で使っている一珍の色は20種類以上あります。調合を間違えると、器に絵を描いた際に違う色が付いてしまいます。そのため、間違えた場合は、調合した一珍をすべて捨てなければいけません。
※山下陶苑で使われている20種類以上の一珍。
【感想】種類や量、比率を間違うと、正しい色ができないんですね。重量計を使って、慎重に量られている様子から、調合のシビアさが伝わります。
【仕事に携わってみての感想】
――この仕事に携わってみての感想を教えてください。
道上 通常の絵の具とは違って、一珍は色鮮やかな色が出るので、多様な色の線が描けて面白いと思います。
――20種類以上ある一珍の中で、道上さんは何色がお好きですか?
道上 糸結びシリーズやラーメン鉢の牡丹を描くときに使う濃い赤色が好きです。比率の計算もするので調合は難しいですが、できあがった一珍を使って絵柄を描くことは楽しく感じられます。
※糸結びシリーズ(左)と牡丹(右)のラーメン鉢。濃い赤色の一珍が使われている。
【感想】凹凸を作り出して絵柄の表現の幅を広げる一珍。その多彩な線が描かれるまでに、ヒトテマかけられているんですね。芸術の奥底に潜んだ数学的な世界が垣間見えたインタビューでのひとときでした。