スタッフインタビュー その2 〜成形後の仕上げ〜
山下陶苑についてもっと知るべく、8年にわたって成形後の仕上げを担当している堀川さんにインタビューをしてみました。
寡黙で穏やかな堀川さん。普段は多くを語らず、黙々と作業に打ち込まれる姿はまさに職人。
そんな堀川さんに、仕事の内容と仕事に関わってみての感想についてお話を伺います。
【成形後の仕上げの仕事内容】
――まず初めに、成形後の仕上げの仕事内容について教えてください。
堀川 お茶碗や皿の成形後の仕上げには機械を使って、生地の高台のフチを粗く削ります。その後、専用のスポンジに水を含ませて、スポンジで擦り、フチを丸くします。
堀川 手作業で仕上げる作業があり、急須やマグカップはパーツごとに成形しているため取手や急須口を付ける作業が必要です。
接着にはドベ(生地と同じ土を水で溶いたドロドロ状のもの)を使います。マグカップなどの取手部分を接着し、接着面を水拭きしてきれいにするなど、仕事は多岐に渡ります。
【感想】山下陶苑には、5寸皿、3寸皿などの皿類や、丼、マグカップや急須、茶碗など、多くの種類の器があるため、すべての器の粗削りや接着などの仕上げをするのは大変だと感じました。
【気を付けること・注意すること】
―仕上げを行う際に気を付けること・注意することを教えてください。
堀川 生地を傷つけないようにすることです。傷がある場合には、水を含ませたスポンジや指で擦り、きれいに仕上げます。傷は、脱型(成形して、乾燥させた生地を型から外す作業)の時に、手で傷つけてしまうことでできます。
よく観察して、傷を見つけることが大切になります。また、粗削りの際にうまく削れていない部分もあるため、そこをもう一度削ってきれいにする作業も必要です。
【感想】
生地の仕上がりに直結するため、細心の注意が必要な作業だと感じました。傷があると、ヒビが入ったり、割れたりするため、その後の作業に影響を及ぼします。堀川さんが傷を見分けてきれいに直してくださるので、絵付けをする私たちのもとにきれいな生地が届くんですね。
それからマグカップなどは、ビニールで包むことで乾燥をゆっくりさせ、ひび割れ防止にもなり、細かいことまで気を使っていただいているんですね。
【仕上げの難しさ】
――仕上げをするにあたって、難しいと思うことはありますか?
堀川 一日のうちにこなさないといけない生地の数が多く、スピードも必要になるので、すばやく傷を見分けるのが難しいです。
また、夏場はすぐに生地が乾くため、作業を進めるのが難しかったり、冬場は座りっぱなしで動かないため寒かったりと、季節によっても大変さが変わります。
生地によっても難しさが変わってきて、初めのうちは急須をよく割っていました。割れないようにするためにはどう仕上げたらいいかを考えるうちに割れなくなりましたが、自分の頭で考えて、工夫をしなければいけないため難しかったです。
【感想】その時の気候や生地の形によっても難しさが変わってくるんですね。多様な種類の器に対応させた削り方、仕上げ方を考えるのも、難しくて大変な作業だと思いました。
【この仕事に携わってみての感想】
――この仕事に携わってみての感想をお聞かせください。
堀川 慣れたと思っても、ちょっとした事でうまくいかなかったりして大変です。例えば、フチを削る時にうまく丸くならなかったりと、やり方が違うだけでうまくいかなかったりします。
また、ラーメン鉢や丼物の生地など重いものをたくさん運んだりするので、きついときもあります。
――仕事をする際に、意識していることはありますか。
堀川 使う人のことを考えて、なるべく良い物を作りたいと考えています。使う人が使いやすい物を作るためには、どうしたらいいかを考えて、仕上げの仕事に取り掛かっています。
【感想】8年間にわたって仕上げの仕事をされている堀川さんにも、うまくいかないことや試行錯誤されていることがあるんですね。また、普段は寡黙な堀川さんが情熱をもってものづくりをされていることに感動を覚えました。傷を見分ける繊細な作業もあり、力仕事もあり、なおかつスピードを求められる大変な作業ですが、この仕事があるからこそ、形のきれいな使いやすい器ができるんだと知ることができました。